笑顔は大事。

顔を合わすなり山田風太郎の戦後日記を取り出して熱く語るUさん。
戦中日記と言えば内田百輭東京焼尽」を、最近ちょいちょい拾い読みしている。
小沼丹の短編にやはり本人をモデルにした戦時中の話があった。


山田風太郎はその頃医学生だった。絶望して怒っている。
内田百輭はそれなりの地位のある会社員で、酒があるかないかをいつも気にしている。
小沼丹は20代半ばの教師で、妻と赤ん坊を疎開させる。淡々としている。
戦前戦後の作家の日記の同じ日付を集めたアンソロジーなどがあったら読みたい。
例えば、東京大空襲のときの。
堀田善衛方丈記私記」ではそのとき神奈川にいて燃え盛る東京の空を見た。
数日後、(多分)つきあっていた女性が住んでいた界隈に出かけ、焼け野原の中で偶然天皇を見る。
自分の家が家族が焼かれた人々が泣きながら天皇に謝っている姿を見て、
天皇に対する激しい怒りを覚えたと書いてあった。
終わってからのことではなく、渦中のその瞬間でのその感情が生々しかった。


ちょうど今これ、という感じでUさんと関心がシンクロしたことになんだか高揚した。



さてアトリエ・ダンカンプロデュースのカンパニー・デラシネラ「日々の暮し方」を池袋あうるすぽっとにて。
新しい役者陣を迎えても揺るぎないけれどのびやかな小野寺修二さんの舞台なのであった。
前回は怪我でおやすみだった藤田桃子さんが、その分を取り返すようなキレキレのパフォーマンス。


寝不足のため睡魔と戦うのにかなりの集中力を要し、
観終わったあとKちゃんやUさんが次々と
印象に残った台詞を挙げるけれどもほとんど覚えていなかった。
おかげで舞台のあれこれがよみがえり、つくづく一緒に行ってよかった。



不安が通奏低音として。



共にいる人のわからなさ。


相手がバラバラ死体になってもちゃんとわかるようにときどきじっくり観察している、とKちゃん。