あたたかめ、晴れ

T君は昨日は360度どこから見ても難儀そうに松葉づえをついていたが、
今日はひょいひょいと移動している。
すっかりものにしている。


社長から書類を頼まれた。来年のお中元まででいいよと言われた。
少なくとも来年のお中元まではクビにならなさそうだ。
普段の勤務ぶりに加えて先月は犬の通院で
さんざん遅刻や半休をしてタイムカードが真っ赤だというのに。
ありがたいというか申し訳ないというかそれでいいのだろうかというか。



ジュンパ・ラヒリ「その名にちなんで」を読み始めた。
とうとい。
詳細に書かれたことのひとつひとつが必要で大切で重要だ。
ひとことももらさずに読みたい。
場面場面で想起することが多すぎて、
宙を見つめて考えてしまって、
全然読み進まない。
これに耽溺したい。



夜、ネパール展に行く。
行く前にラーメン屋に入る。
背後の席に老夫婦が先客でいた。
しばらくしたら奥さんが席を立って厨房の方へ行き、日本酒を注文していた。
冷やでいいかと店員が返すと席の方から「常温!」と声がして、
しかし日本酒はぜんぶ冷やしてしまっているらしく
「おとうさま、それでいいでしょ、冷やしちゃってるんだって」
と奥さんが席に向かって言う。
おとうさまは不満そうだったが、冷やが運ばれた。
奥さんは
「ほんとにすいませんねえ、あら、だいじょうぶですよ、常温でも平気でしょ」と
店員と夫双方に向かって忙しい。
店員は慣れているのかほがらかだ。
夫婦は地元の常連なのだろうか。
もう一組の客は小学生ぐらいの女の子とお母さんで、
「もう食べた?」とお母さんに聞かれた女の子は、
「メンマがまだ」と答えていた。
神楽坂は意外とアットホームな街だと思った。


5ミリぐらいのアウェー感とともに8時まで在廊。
日中、たまたま通りかかってフラッと入ってきたすらっとしたイケメンが、
カレンダーを買ってくれたと教えてくれる。
そりゃ結構な情報だ。
カレンダーはポスター版はよく出ているようだが、卓上版はいまいち。



「その名にちなんで」を読み続けているが、
登場人物たちの大切なものを自分も大切に感じてしまうので、
それが奪われたときにあまりにも悲しくて、また目に水が張る。
という意味では外で読むのに向いていない。
けれどなんとなく外で読みたい気持ちになる本だ。