風があって寒い、雪のち雨

夜のうちの大雪が積もったのち本降りの雨になった朝。
雨だから雪かきをする人もなくべしゃべしゃで踏み固められた雪。
そして風。
駅の電光掲示板は発車時刻が表示されなくなっていた。
電車はこれ以上はないのろのろ運転をしている。
駅には人があふれている。
しかし駅員以外は誰も声を出さないのでとてつもなく静かだ。
やっと来た電車に先頭の数人が乗り込んで他の人びとがあきらめる中、
老いた熊谷守一みたいな風貌の爺さんがどうでも乗ろうと突進し、
駅員もそれを止めないで押し込んでやっていた。
ドアの隙間からマフラーのフリンジを3本ばかりはみ出させて発車した。
爺さんの手にはスポーツ新聞が握られていた。
途中のO駅で幼児が激しく泣く声が遠くから聞こえてきて、
えもいわれぬ不安感。
横の女性のバッグが腕に食い込んでめちゃくちゃ痛い。
ここまでして行かなければならない場所なのか会社は。