終日、実家。
西川美和「その日東京駅五時二十五分発」。
兵隊として出征したのに、戦争の惨禍も、感情的な高ぶりも、
味わわずに終わった。
そのことを意味づけるのではなく、そのことをただ描く。
書いてあるよりも多くのことを思う。
たとえば、窓のモールス信号の場面での主人公の表情のことなど。
西川美和は「ゆれる」などを撮った映画監督で、
だから描写が鮮やかで、映画を観ているようだ。
赤く燃える(多分音も匂いも見ている方に届かない)八王子の空。
たくましい姉妹の後ろ姿。
捕虜交換の映像。
元祖というか本物の迷彩服に身を包んで本物の戦争をしている人たち。
カモフラ柄とか浮かれていることが冒涜のような気持ちになる。
浮かれたカモフラ柄だけの世界の方がもちろんいい。
玉手英夫「クマに会ったらどうするか」。
ずーーっと読んだりやめたり読んだりやめたりしていて、
一向に読み進まない。
ときどき挟まれる軽口がいい感じでとっつきやすいと思ったのだが、
実はこれと学術的な話しとのバランスが
私にとってすごく悪いのかもしれない。
軽口が入るとそっちに頭が切り替わるのだけれども、
その前後に何のクッションもなく生物学の話が
しかも結構な情報の密度でどどどっと繰り出されて、
全然ついていけなくて、行きつ戻りつする。
内容自体はすごく面白いのだけれど。
そしてまた読み終わらなかった。
挿絵がやたらかわいい。
というか、そもそもは同タイトルの
アイヌの猟師の話を収録した本を読むつもりだったのだ。
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