井伏鱒二「漂民宇三郎」

天保9年、富山の商船が西風に遭い漂流、米国捕鯨船に救助された生存者一行がハワイからロシアを経由して日本に帰るまでの模様を、最年少の乗員の一人だった当時18歳の宇三郎を中心に据えて描いた小説。


漂民たちの主体性のない右往左往ぶり。
運命を切り開いて行こう!みたいな前向きな者は1人もいない。宇三郎は活躍しない。苦悩もしない。ムキにはなる。でかい事件も別に起こらない。
小動物のようにわーきゃー小競り合いをする漂民たち。
中高生の頃の、出生の秘密とか宿命とか別次元とか大好物の私が読んだら三ページでやめてたかもなあ。
なんでこんなに面白いのかわからない。ページをめくる手が止まらない。すごくおいしいごはんを食べているような気持ち。
巻末の三浦哲郎による解説で、宇三郎衝撃の出生の秘密が明かされてひっくりかえった。解説を読むのは本編終了後に!!



英語やロシア語を漂民たちの耳を通したそのままで表記していて、意味も漂民たちがなんとなーくわかってきた以上のことは書いてないのがまた面白くて。
ウェレウェレタンキ。ゲブメ。ゲラウェー。