朝、洗濯物を干そうと掃き出し窓に向かうと窓の下にでかい黒ゴキブリがひっくり返って死んでいた。
1階だし木造だし出現するのは仕方ないとして、発見した時に8割がた死体なのはなぜなのか。
どこからどのように侵入してここで死に至ったのか。
まあ、どうでもよい。
昼には住宅街のまだ回収されていない燃えるゴミの集積所前で、たどり着けなかった感を醸してアナザーゴキブリが行き倒れ。
退社後、行きたい展示などもあったが、なんとなく実家。
晩飯を食べ終わってだらだらとワインとチーズを嗜んでいたら、皿のところで餌を食べていた様子のすずが突然飛び上がって腰を抜かした。何事かと近寄ると舌が灰色になっている。さっき皿の中にあるのを見た、茶わん一杯分ぐらいの白飯が全部ない。母がまた、と思ったがどうせ食べはすまいと放置したのだった。失敗だった。口をこじあけたら喉の奥が全部ごはん。
かき出して、逆さにして背中を叩く。先週習った救急救命処置をこんなところで発揮することになるとは。
気が付くと床に血が散っていて、こないだのように肺から出たのかとぎょっとしたが、噛まれた私の指の血だった。
母は私の指を心配するが、指のけがではそうそう死なない。
ペットタクシーを呼んで、こないだ獣医に教えてもらった救急病院へ連れていくことにした。
タクシーとほぼ同時に姉帰宅。一緒に向かう。
医者は斉藤工っぽさのある若い男。
レントゲンを撮ったら、食道にぎっしり飯が詰まっていた。これを麻酔をかけてチューブを突っ込んで胃に押し込むとのこと。
晩飯がまだだった姉には9時ごろ帰ってもらい、2時までいた。
待っている間に次々と急患がやってくる。ほぼ全員二人で来る。猫か小さい犬。夜中になるころにベンチが満席になり、それから潮が引くように誰もいなくなった。全員安心して帰って行ったのが何よりだ。
手当はうまくいった。麻酔がきれかけでぐっすりぐったり寝ているすずの顔を見てから帰る。大通りを歩きながらタクシーを拾おうと思うが、すべて人を乗せている。下り方向なのだから当たり前で、向かいの車線は空車の赤い文字を光らせたタクシーがうじゃうじゃいる。
曲がってもうしばらく歩く。右側には畑が広がり、その上に火星が強く明るく光っている。
後ろからようやく空車が来たので乗って帰る。
姉が起きていた。紫蘇ジュースをいれてくれる。
母も物音を聞きつけて起きてきた。
が、明日早くにまた行かねばならぬのでともかく寝る。