朝、電話が二回鳴ったような気がする。気がすることにして寝ていた。
10時近く起床、降りていくと玄関が開いていて母がいない。
ゆうべ結んでおいた門の紐がほどいたあとに結び直してある。
姉にスクランブルをかけ、とりあえず探しがてら交番に向かう。
路上で、犬の散歩をしていた女性と、何か調査していたらしき電鉄の社員と、駐車違反取締員と駅の駅員に聞いてみる。全員見ていない。取り締まり員には連絡先を伝えてもよかったかもしれない。と別れた直後に気が付く。
交番には警官が一人いた。私の情報を書き込んだ紙の裏に、別の交番からの連絡が書いてあって、それが母の情報だった。
母は三つ先の駅の交番にいた。歩いてそこまで行ったらしい。
電車で迎えに行き、タクシーで帰る。
こっちの交番には若い女性と、中年より少し若い男性と、高年の男性と、3人の警官がいた。若いほうの男性が母に説教を垂れ始めようとしたので、すかさず「忘れちゃうんですよ」と制したところ、その後は不満げに沈黙していた。説教のチャンスをうかがっているタイプの警官が一定数いる気がする。
家に入るときに玄関でバランスを崩し、背後に立っていた私がドアを閉めようと振り返った瞬間によじれた形で倒れこんだ。姉は母を迎える形で前に立っていたのに支えることもできなかった。長子はこういうときに自分がとっさに動かないというか動けない。そして逆の立場だったら、なんで目の前にいたのに何もしないんだとものすごい剣幕で私を怒鳴りつけていただろうなと思う。
膝が変な風にねじれていたので心配したが、問題ないようだった。
とりあえず朝食を食べて落ち着いたあと、姉が母を風呂にいざなう。
私はその間に庭の枯葉に水をまいた。
戻ったら母は寝直していた。すでに1時近い。墓参りはやめにして、私は出かける。
「こんにちは、私のお母さん」を観て、喫茶店で時間をつぶして、門に臨時につけるキーを買って、有楽町に移動して「香川1区」観て22時過ぎ帰る。母はもう寝ていた。
「平家物語」2話観ながら晩酌していると姉が降りてきた。
スカート少しやって、風呂入って寝る。
「こんにちは、」は父親の影の薄さがとてつもない。
「おがーざーーーーん!!!」という映画だと思う。母への娘の気持ちがパンパンに詰まった映画だ。
主役の子のえくぼがかわいい。
若き日のお母さん役の人はきゃしゃで小柄なのだが、役の気の強さが中国だなあと感じた。日本だったら見た目通りそよそよしていると思う。どっちが好きかと言ったら断然強いほうだ。
工場長の息子役は濱口岳に見えるし、晩年のお母さん役は原田美枝子に見える。
「香川1区」は熱い映画だった。
監督の対談を読んでから行ったので、なるほど敵対候補…と思った。PR映画と言われたことについて抗議しに行くのがよかった。
小川さんの実家でのご両親へのインタビュー、お父さんのお母さんに対する態度について(地方…)とは思った。しかしお母さんがその内面まで見越して受け止めているのがすごかった。いや受け止めないほうがいいじゃんと思うが。聡明なんだ。この親に育てられての、この人なのだなというか。そして娘さんがまた熱い。歪まない人々。
何年かしたら、ディレクターの女性ご本人の作品を目にすることができるといいなとも思った。
熱さで自然に人が集まって、というのは「逆行」の監督さんにも通じるものがある。今はそういう動きが起きやすいのかもしれない。